アジアの英語教育
第1回 韓国の英語教育事情

ナラボー・プレス 赤井田拓弥
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すでに「国際化」という言葉自体が古めかしく聞こえるほど、日本と世界各国の距離はどんどんせばまっています。物理的な交通手段の発達もさることながら、衛星放送やインターネットなど、メディアの発達が、これに大きく貢献しています。そして、そこでは、世界言語としての英語が当然のように使用されています。英語ができることが他人より秀でているという時代は終わり、英語はできなければならない時代に入っています。
次世代を担う高校生が英語をどう学べばよいのかを考える時、世界、特にアジアの隣国の英語教育現場がどのようになされているのかを見てみるのは大いに参考になるのではないでしょうか。韓国では、1997年から通常授業として、英語が小学校のカリキュラムに組み込まれています。一方、日本では来年2002年から導入の予定です。こうしたことからも、日本と韓国の英語教育や英語力はよく比較され、議論の的となっています。
そこで、『Peripatos』では、「アジアの英語教育」と題して、シリーズで各国の英語教育の現状を取材して報告することにしました。創刊号の第1回目では、韓国の英語教育事情の報告です。
韓国の英語教育の歴史

韓国での最初の公的英語教育は、1883年に始まった。同文学という学校でイギリス人1人、中国人2人を教師としてスタートしたのが始まりで、当時の教え方は、ダイレクト・メソッドであったという。つまり、英語だけで英語を教える方法である。1886年になると、育英公院ですべての履修科目を英語で教え始めた。この学校では、生徒は10か月で3,000語を覚えなければならなかったという。そして、1910年から1945年までは、韓国は日本の植民地下に置かれ、英語教育にとっては暗い時代を過ごすこととなる。(『現代教育新聞』ホームページより)
ソウルオリンピックを契機に大きく発展
韓国が英語教育に対して大きな転機を迎えたのは、1988年のソウルオリンピックである。1981年に、ソウルでのオリンピック開催が決定して以来、英語の必要性が叫ばれ、オリンピックでの職員やボランティアの人たちの英語力を評価するテストとして、1984年にTOEIC(Test of English for International Communication)が採用された。
韓国人にとっての英語の難易度

我々日本人の英語力や英語教育について韓国の人たちと比較する場合、気になるのが、「韓国の人たちにとっての英語は日本人にとっての英語とどう違うのだろうか」つまり、日本人が英語を習得するのに苦労しているように、彼らも同じような苦労をするのであろうかという素朴な疑問である。
米国国務省のデータ
ここに興味深いデータがある。
アメリカ国務省の付属機関のForeign Service Institute(FSI)は、外交官養成所として、アメリカ人外交官の卵に世界中のいろいろな言葉を集中的に教えることで有名だが、そのFSIが1973年4月に「FSIにおける外国語スピーキング絶対能力の伸び率」(Expected Levels of Absolute Speaking Proficiency in Languages Taught at the Foreign Service Institute)というきわめて興味あるチャートを発表した。
それは、FSIの豊富な実際の経験を基に、英語を母国語とするアメリカ人が、どの言語をどのくらいの期間(時間)学習するとどの程度のレベルのスピーキング能力に到達するかを示したもので、これほど広範囲に、しかも信頼できるデータは非常にまれである。
英語を母国語とする人たちにとっての難解語
このチャートでは、言語学習のしやすい言語としにくい言語、または学習するのに時間のかからない言語と時間のかかる言語とによって、対象となる諸言語を大きく4つのグループに分けてある。
このチャートは単なる推測とか理論ではなく、実際の学習者の観察に基づいた研究発表である。それぞれのグループに属する言語群は次のようになる。グループ1が、英語を母国語とする人たちにとって最も学習しやすい言語で、グループ4が最も難解な言語となる。
グループ1
デンマーク語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スワヒリ語など
グループ2
ブルガリア語、ファシ語、ギリシャ語、ヒンズー語、インドネシア語、マレイ語など
グループ3
アムハラ語、ベンガル語、ビルマ語、フィンランド語、ハンガリー語、タイ語、ベトナム語など
グループ4
日本語、韓国語、中国語、アラビア語 |
つまり、英語を母国語とする人たちにとって、日本語や韓国語は最も学習しにくい言語になる。逆に言うと、日本人や韓国人にとって、英語を習得するのが並大抵のことではないことも理解できる。ちなみに、平均的な言語適性を持つアメリカ人が、グループ1のオランダ語を言語能力ゼロの状態から「一般的な言語学習の完成レベル」であるLPIレベル3(ページ下欄参照)にほぼ960時間で到達するのに対して、日本語や韓国語の場合、2,400〜2,760時間かかるとされている。つまり、オランダ人たちが英語を習得するのは簡単だということになり、彼らのTOEFLの成績が飛び抜けて良いのもうなずける。
こうしてみると、英語習得の難易度に関しては、日本人も韓国人も同じようなハンディキャップを負っていると言えよう。
LPIレベル3の定義(一部)
構文もかなり正確に,またかなりの語彙を使って英語を話すことができ,日常・社交・専門のいずれの話題についても,改まった会話・くだけた会話のほとんどいずれにも効果的に参加できる。それでもなお,業務上の言語使用は,共用理解の話題・国際会議に関することなどに限られる。会話にはまとまりが認められる。使用される言葉は適切だが,ときどき不完全さが認められる。しかし,誤りはあっても事実上理解の妨げとなることはなく,ネイティブ・スピーカーに混乱を与えることはまずない。自分の言いたいことを正確に伝えるために,構文や語彙を効果的に組み合わせることができる。進んで話し,適度に間を空かせないで話すことができる。発音は,明らかに外国人のものと分かる。個々の発音は正確であるが,アクセント・イントネーション・声の高さの使い方に誤りが見られる。
『TOEIC活用実態報告 第11回』国際ビジネスコミュニケーション協会 TOEIC運営委員会発行、2001年 |
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