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英語教育情報誌 WEB Peripatos
アジアの英語教育
第4回 中国の英語教育事情
究文社代表 小沼忠雄

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  日本の英語教育を考える場合、韓国の英語教育がよく比較対照して取り上げられますが、隣の大国、中国でも英語教育改革が進められています。今回は、中国の英語教育の現状と新しい教育改革に挑む姿をお届けします。

現代中国と英語の位置づけ

中国を席巻する英語学習熱

 現代中国の英語習得熱の一端がうかがえる映画がある。『クレイジー・イングリッシュ 瘋狂英語』(1999年/中国/1時間30分)という、1998年から独自の英語勉強法を掲げて中国全土を講演行脚する青年教師李陽(リー・ヤン)先生のエネルギッシュな活動を追った異色ドキュメンタリー映画である。
 このリー・ヤン先生は中国のカリスマ英語教師といわれている。“Let's CRAZY ENGLISH ! ” と連呼し、腕を振り体をねじって、全身を動かしながら大声を出すことで英語をマスターしようというヤン先生の講演を聞くために集まった満員の観衆が「How!do!you!do!」と叫ぶ様子は、まるで政治か宗教の集会を思わせるほどである。
 実は、ヤン先生の講義の目的は英語習得の域をはるかに超えたところにある。すなわち「英語を話して日米欧に打ち勝とう! そしてお金を儲けよう」というモチベーションを中国人に植えつけることなのである。この映画はかなり極端な例かもしれないが、こうした英語学習熱の背景にあるモチベーション、言葉は悪いが「英語力=お金儲け」という図式は、現代中国の英語教育事情を語る場合、無視することはできないだろう。
 むろん、中国が経済市場拡大の途上にあるとはいえ、英語学習の動機がすべて「経済上のメリット」にあるわけではないだろう。が、少なくとも現在の英語学習熱を動かす大きな原動力になっていることは間違いない。
 「中国人の若者のあいだでいま、英語と日本語の学習熱が高まっている。欧米と日本の企業進出がここ数年盛んになり、こうした外資系企業への就職や観光通訳などに必要となってきたためだ。伝統的な計画経済から市場経済への転換を反映した現象のひとつである」(「LIVE ASIA 1997年」 川村範行 東京新聞/中日新聞・上海支局長)
 特に、中国経済の中心である上海で、この傾向が強いらしい。学生も社会人も外国語習得に躍起になっているそうで、高収入、合理性から欧米企業への就職にあこがれる学生が圧倒的に多くなっているようだ。国際都市上海という中国でも特殊な地域の話であることを割り引いても、中国では「語学力=経済エリート」という図式がありありと世間の中で見えているのではないだろうか。

語学力=経済エリート

 そうした図式を裏付ける最新のデータがある。人材情報サイト「中華英才網」が2002年9月22日に発表した、北京、上海など大都市で行われた収入調査の結果である。その調査によると、英語習得が高収入のための最も重要な条件であることが明らかとなっている。
 「調査によると、外国語上級者の平均年収は5万3378元で、中級者の3万1211元を大きく上回っている。調査対象者の最終学歴はほとんどが大学卒業で、全体の81%を占めた。このため調査結果は、ホワイトカラーの中・高所得者層の現状を示すものであるといえる。修士号取得者の平均年収は6万618元で、博士号の5万7991元よりも4.5%高かった。転職者の80%が『収入が増加した』と答えており、転職による収入増加は平均2.27倍。海外での職歴は高く評価されており、海外での働いた経験がある人の平均年収は、そうでない人の1.66倍だった」(「人民網日本語版」2002年9月24日)
 1990年代に入って、中国において修得すべき第一の外国語は「英語」を真っ先に指すことは日本と同様である。注目すべきは、英語力レベルが収入に直結するという現実である。その善し悪しはともかく、英語を学習する際に、これほどの生々しいモチベーションがあるだろうか。
 日本でなら英語を学習する第一の目的は、現実の問題として「受験」との絡みを無視することができない。もちろん日本でも、英語が就職に有利になるケースも多いが、「英語ができると高収入が得られる」と言うわけにはいかないだろう。
 中国ではこうした「高収入や就職を得るため」という意識を英語学習の主要な動機の一つとして挙げられる環境がある。これは、少なくとも英語学習者の側からすると、日本と決定的に異なる点ではないだろうか。


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